Electron Chager Laboratory サイトマップ
| ホーム | 製品情報 | 会社情報 | 資料請求・お問い合わせ | 
ホーム新着情報一覧大阪府立大学工学部ニュース
電界とイオンと水の不思議な関係 −共同研究で得られた研究シーズ−
ロゴ-工学部ニュース見出し
川本俊治 電気・情報系専攻 電気電子システム工学分野
 府内の企業(E社)から技術相談があったのは、ちょうど4年前でした。「酒・コーヒー・タバコなどに電界を加えると味が良くなるのはなぜでしょうか」という内容で、工学部HPの教員研究内容を調べて、田尻先生(数理・名誉教授)、五十鈴川先生そして私の3人に、ということで相談することになりました。よく話を聞きますと、

(1)60Hzの高電圧による電界を、グラスに入れた酒に加えると味が良くなる。
(2)水と油をかき混ぜた液に同様の電界を加えると水と油がすぐに分離する。
(3)注射器に水を入れ、注射器の上下に同様の電界を加えると、水滴は針先から棒状になって落下する。

など、いろいろと不思議なことが起こるので、E社は、この20年間に製造販売してきた製品の回路がもしかすると特別な非線形現象やカオスなどを発生させている、あるいは地磁気の影響によってこのような現象が生じているのではないか、と考えていたようです。しかしこの状況がもうひとつ理解できませんでしたので、実際にその製品で酒に電界を加えて実験しましたら、5分後にはすっかり味がまろやかになっていることが分かりました。それでは共同研究しましょう、ということでスタートしました。

 ところが、研究として何をどうすすめてよいのか見当がつきません。E社と何度も検討会議を開き、試行錯誤を重ね、まず現象そのものを詳しく観察することにしました。そして製品の電気回路が簡単ではあるものの、2次側は開回路でしたが、普通の閉回路としても現象を再現できることが分かりました。おそらく電界のみの効果によるものと考え、「電界」「水」をキーワードに多くの文献を調査すると、論文中に「イオン風」を見かけるようになりました。従来から知られているように、電界を加えても温度が変化しない程度の微弱エネルギー、すなわち非熱プロセスにおいて、図1のように植物の発芽・生育などへ大きな影響を与える技術と関連することが分かりました。しかしながらその技術でも、本質的なメカニズムがミクロな動的現象であるために、主として実験結果に基づく仮説上で研究がすすめられており、科学的な問題点は多く残されているのが現状です。国内外の電界・イオン・水に関する過去約40年間の研究者と論文を追跡調査した結果、不思議な分子構造で極めて特異な性質を持っている「水」の研究が、意外にもあまり進展していないことが分かりました。共同研究を開始してすでに2年が経過していました。何の成果も得られないまま共同研究はここでストップしてしまいました。

イラスト-微弱エネルギー現象
図1 微弱エネルギー現象

 ところが、この電界とイオンと水の不思議な関係について、いちど研究室で簡単な装置を作って実験してみることにしました。図2の回路で、まず平板電極と針電極の間に水のビーカーを置き、針先と水面の距離をd=10(mm)とし、電極間に5〜10(kV) の電圧を加えます。回路に直列に電流計を入れると、数10(μA) の電流が流れましたので、2次回路で消費される電力は2〜3(W)となり、微弱エネルギーであることが分かります。そして図3のようにこの回路の針先では電界が集中して部分放電が起こり、針先周辺の空気がイオン化されてプラスとマイナスのイオンが発生します。特に電極間に直流の高電圧を加えて針電極をマイナスの電位にすると、針周辺で発生したイオンのプラスイオンは針電極(−)に引き寄せられ、マイナスイオンは平板電極(+)に向かって風となって2〜3(m/sec) の速度で移動します。平板電極の代わりに円筒電極を使えばマイナスイオンの風が円筒中を吹き抜けますので、最近大流行している家電品のマイナスイオン発生方法のひとつであることがわかります。

イラスト-実験回路
図2 実験回路

イラスト-イオン風の発生 
図3 イオン風の発生
グラフ-水の蒸発速度

図4 水の蒸発速度

 実験のように電源が交流の場合は、イオン風がプラスとマイナスに入れ代わるために中性分子が多くなり、同じ速度の風が針電極から吹きますので、扇風機なしで風が吹くという意味でファンレス風とも呼ばれます。例えば針電極近くに煙を送ると、風の強さがよく分かります。そしてその風の下に、図2のように水のビーカーを置くと、水面に風が当たって水の蒸発が加速されます。図4にその実験結果を示しました。横軸は時間で縦軸は蒸発量ですので、●印は水の自然蒸発で、他の印は電圧を変えた場合の速度です。印加する電圧が高くなればなるほど風が強くなり、蒸発速度が加速されます。120 分後に電界を除去すると、今度は自然蒸発の速度より遅い蒸発速度になることが分かりました。さらに詳しく調べるために、水に絶縁性の微粒子(比重 約1.0)を混合し、水面と水中の微粒子の流れを観測すると、水面ではイオン風の流れに沿って、そして水中ではその方向にEHD (Electro Hydro Dynamics) 流動が発生していました。現在は、電界によって発生するイオン風と水の蒸発にかかわる不思議な関係の中で、水のミクロな構造がどのように変化しているかを追求し、やっと興味ある結果が出始めたところです。2年間の共同研究を通じて新しい研究シーズを得ることができ、さらに今後の成果を実用化研究へも発展させたいと考えています。

Copyright 2006 Electron Charger Laboratory Inc.